6.インバータによるモーター回転速度の制御について その2
インバータ駆動における汎用モーターについて
汎用モーターは、一般的に商用電源で駆動する一定速運転用モーターです。固定の周波数(50Hz、60Hz)と、その時の電圧に対して定格トルクで連続運転が可能なように設計されています。インバータ駆動ではさまざまな周波数で運転が可能ですが、一般的には60Hzが定格周波数として設計されており、これを基底(ベース)周波数と言います。また、トルク特性(定トルクか、低減トルクか)によってインバータ制御方式(V/f制御か、ベクトル制御か)が異なります。
汎用モーターは、30Hz以下の周波数でモーターの冷却能力が低下し、温度上昇の問題があります。したがって、モーターの連続運転トルクの低減を考慮する必要があるのです。この場合、連続運転範囲を狭くするか、モーター容量を大きいもので選定するなどの対策が必要になってきます。
商用電源でのモーター駆動は、モーターに加える電圧と周波数が大きいため、大きな始動トルク、すなわち定格トルクの200〜300%程度が得られます。また、V/f制御のインバータを利用すると、出力する周波数に応じてV/f特性から一義的に決定する電圧をモーターのすべり等の状態に関係なく出力が可能です。しかし、V/f制御はモーターの低周波数領域でのトルクが低下し、始動トルクが小さい難点があります。
インバータ駆動における定トルクモーターについて
インバータ専用の定トルクモーターは、一般的に6〜60Hzの周波数で定トルク連続運転での温度上昇に耐えられる設計となっています。ベルトコンベアや昇降機など、定トルク負荷特性を要求される用途に最適です。出力が37kW以下(一部除く)は低速でも負荷トルクを軽減する必要はなく、V/f制御においても定トルクで連続運転が可能になっています。
幅広い変速を必要とする負荷の場合、この定トルクモーターを使用するのが一般的です。
しかし、出力周波数が60Hzの時に、トルク力は150%なのに対して、出力周波数が120Hzになるとトルク力が70%になってしまいます。つまり、出力周波数が大きくなるにつれてトルク力が低減していくので注意が必要です。
基底(ベース)周波数(一般的なインバータの定格出力周波数)を超える領域で使用する場合、インバータは120Hzまでの周波数であれば一般的に問題はありません。ただし、モーターはモーター容量によって最高周波数が変わる事があります。さらに、電圧は変わらず定出力に近い特性となるので、前述の通りモーターの発生トルクは出力周波数が大きくなるにつれて低減する事から、負荷トルクが一定であっても、モータートルクが不足する恐れがあり注意が必要です。
インバータ駆動における400V級モーターについて
400V級モーターをインバータ駆動させる場合は、配線定数に起因するサージ電圧がモーターの端子に発生し、その電圧によってモーターの絶縁を劣化させる事があります。200V級インバータで駆動する場合、直流電圧が約300Vであるため、サージ電圧によってモーター端子電圧の波高値が2倍になっても絶縁強度上問題はありません。
しかし、400V級インバータで駆動する場合、直流電圧が約600Vとなるため、配線の長さによっては、サージ電圧が大きくなり、絶縁の損傷をまねく場合があります。このような場合は、まずモーターの絶縁を強化するため、400V級インバータ駆動用絶縁強化モーターを使用しなければなりません。
他の手段として、インバータ側でサージ電圧を抑制する方法があります。モーターの巻線の絶縁を強化して、耐サージ性を向上させる事ができます。また、サージ電圧を抑制する方法として、電圧の立ち上がりを抑制する方法と、波高値を抑制する方法があります。
配線の長さが比較的短ければ、インバータの出力側にACリアクトルを設置し、電圧の立ち上がり(dv/dt)を抑制する事によって、サージ電圧を低減する事が可能です。
しかし、配線の長さが長くなると、サージ電圧の波高値の抑制ができなくなる事があります。その他、インバータの出力側にフィルタを設置し、モーターの端子電圧の波高値を抑制する事も可能です。
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