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5.インバータによるモーターの回転速度の制御について その1

モーターの回転速度について

モーターの回転速度は、その周波数とモーターの極数でほぼ決定する事ができます。産業用のインバータ3相モーターを接続する事によって、3相モーターに与える周波数を変える事が可能です。
3相モーターの極数は、2・4・6のように2の倍数となり、連続した値ではないため、極数によって3相モーターの回転速度を連続的に変える事はできません。一方、電力会社から供給される周波数は固定の50Hz、60Hzですが、インバータによって周波数を自在に作り出すことができれば、モーターの回転速度を自由自在に変化させる事ができます。インバータはこの点に着目して、周波数を自由自在に作り出す回路で構成されているのです。

モーターの速度を自在に変える事で得られる代表的な利点として、生産性の向上やショックの少ない始動・停止が挙げられます。回転速度が電源周波数に左右されないため、どの地区でも同じ速度で運転する事が可能です。また、標準のモーターや既設のモーターを利用できる事でコスト低減を実現する事ができます。
これ以外にも、モーターの始動電流が低減できる事から、電源トランスへの負荷を低減する事や、自動運転やFAシステムへの適用なども実現できます。

周波数と電圧について

電力会社から供給される固定の周波数から、インバータが自在に周波数を作り出すには、まず固定の周波数を可変の周波数に変換しなければなりません。そのため、一度交流電源(AC220V)をインバータ内部で直流電源(DC300V)に変換します。この交流を直流に変換する回路を「コンバータ回路」と言います。
このコンバータ回路によって変換された直流電圧の脈動分は「平滑用コンデンサ」によって平滑、つまり平らな状態に修正されます。そして、この平滑された電圧を直流から交流に変換する「インバータ回路」に渡す事によって、インバータ回路で運転に必要な可変周波数と可変電圧(最大AC220V)を生成して、モーターに与えるのです。

この二つの回路に使用される主な使用素子は、コンバータ回路にはダイオード、インバータ回路には、高速でスイッチングできる絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)が使用されます。また、このインバータ回路は、制御回路(CPU)によって制御されます。
制御回路は始動指令や周波数指令を受けてインバータ回路を制御し、異常が発生した場合は異常を出力します。コンバータ回路に入力される電流はウサギの耳のような波形をしていますが、平滑コンデンサを通してインバータ回路から出力される出力電圧は、短冊の寄せ集めのような矩形の波形をしているのが特徴です。

回転速度とV/f特性の関連について

回転速度の制御を行うには周波数の制御のみ可能ですが、電圧を下げずに周波数のみを下げるとモーターの交流抵抗が下がり、電流が大量にモーターに流れ、モーターが焼失してしまいます。つまり、モーターの焼失を防ぐには、「周波数」だけでなく「電圧」も同時に変える必要があるのです。
モーター駆動用のインバータは、「周波数」と「電圧」を同時に変える事から、VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータと呼ばれています。周波数と電圧を同時に変える以上、モーターに入力する電圧(V)と周波数(f)は、出力周波数の増減とともに電圧も増減して、ほぼVとfとの比率が一定、すなわち正比例関係になるようにする必要があります。この特性を「V/f特性(V/fパターン)」と言います。

V/fが一定だと、モーターはほぼ最適な運転になりますが、周波数が低くなると電圧降下によるトルクが低下するので、それを補償するため低周波数領域では電圧を少し上げます。これを「トルクブースト(トルク補償)」と言います。

トルクブーストの設定値を大きくすると、低い周波数でのトルクは増加しますが、電流が大きくなり過電流や電子サーマルなどの保護機能が動作しやすくなるので注意が必要です。

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